船釣り初心者講座-7
公開日:2024/04/23釣った魚の放置はNG!締め方・保存方法・調理法をわかりやすく解説
船釣りに出かけ魚が釣れたら、美味しく持ち帰ることが大切です。 せっかく釣り上げた魚も、保存方法を間違えると、美味しく食べられなかったり腐ってしまったりする可能性があるでしょう。 今回のコラムでは、釣った魚の保存や美味しい食べ方について解説します。 自宅に持ち帰ってからも、船釣りの魅力を堪能できるよう、魚の締め方や保存方法、調理法などに関する基礎知識を身につけましょう。
魚が釣れたらまず「締める」!その理由と方法は?
魚が釣れたら、「とりあえず海水を入れたバッカンの中で泳がせておく」という方も多いのではないでしょうか。
サビキ釣りなど、どんどん釣れるタイミングでは、なかなか処理をする時間も取れないでしょう。
しかし、たとえ水の中を泳いでいたとしても、釣り上げた魚はその瞬間から弱っていきます。
釣った魚をそのまま放置していると、その身は傷み、生臭くなって食べられなくなってしまいます。
できるだけ素早く、適切に処理してください。
魚が釣れたら、できるだけ早く締めましょう。
「締める」とは、その場で魚を即死させること。
生きた状態のまま狭い場所に詰め込まれていると、魚は傷つき、ストレスを抱えてしまいます。
適切に締めれば、魚の劣化を予防できるでしょう。
また魚が生きている時間が長くなればなるほど、全身に血液が巡り、どんどん生臭くなっていってしまいます。
釣りたての魚をその場で締めておけば、血液の流れを遮断可能に。
生臭くなるのを防げるほか、うま味成分が抜け出すのを防げるメリットも期待できるのです。
では具体的に、釣った魚はどのように締めれば良いのでしょうか?
3つの方法を紹介します。
とはいえ、魚の身が瞬時に冷えなければ、即死させることはできません。 このため、身が大きく内部まで冷えるのに時間がかかる大型のターゲットには、避けた方が良いでしょう。 氷締めに適しているのは、以下のようなターゲットです。
・アジ
・サバ
・カサゴ
・メバル
船釣りで小さいターゲットを狙う場合、1度にまとまった数が釣れるケースも多いでしょう。 このような場合でも、氷水につけるだけの氷締めなら、比較的手軽に処理できます。
ただし、用意したクーラーボックスや氷の量に対して、釣れた魚の量が多すぎた場合、小さめのターゲットであっても氷締めには不安が残ります。 たとえば、一度に大量のアジを氷締めにしようとしても、すべての魚が均等に冷えるとは限らないでしょう。 なかなか冷えないアジはうまく締まらず、生臭くなってしまう恐れがあります。
この場合は、アジを魚バサミでしっかりと固定し、エラから上に向けてハサミを挿入してください。 エラの付け根当たりをバチン!と切れば、アジの背骨を切断できます。 アジがけいれんし、動かなくなったことを確認できれば、上手に締められた証拠です。 背骨をカットすると同時に、大きな血管もカットされるため、 大量の血液も流れ出てくるでしょう。 何度か水を入れ換えながら、すべての血液を出しきったら、血抜き作業も完了できます。 大量のアジでも、美味しい状態で持ち帰れるはずです。
釣った魚が40センチ程度のやや大型以上の場合、氷締めでは時間がかかりすぎてしまいます。 このような場合には、刃物を使ってより確実に即死させられる、活き締めを選ぶ必要があります。 氷締めよりも難易度は高いですが、しっかりと身につけておけば、船の上で慌てることもなくなるでしょう。 活き締めに適しているターゲットは、以下のとおりです。
・青物
・スズキ
・ヒラメ
活き締めにもさまざまな方法がありますが、おすすめは脳締めです。 脳締めとは、魚の脳にダメージを与えて即死させる方法のこと。 魚の脳の位置は種類によって異なりますが、目と目の間、やや上のへこんだ部分を狙ってください。 魚の頭部に触れてみると、そこだけやや柔らかくなっていますから、慣れるまでは触って確認するのもおすすめです。 ポイントを狙ってナイフを入れたら、ぐるっとねじりましょう。 魚の瞳孔が開いたら、脳締めが成功した証拠です。
脳締めをしたら、できるだけ早く血抜きの作業を行います。 魚の脳は停止しても、心臓はしばらくの間動いていますから、このタイミングで体内の血液を抜き切ってしまいましょう。 エラぶたを開き中をのぞいたら、エラと身がつながっている部分をハサミで切ります。 両側のエラを切ったら、海水の中で身をふって血液を洗い流します。
脳締めと共に、近年注目されているのが神経絞めです。 脳締めをしたら、続いて神経絞めまで続けて行うことで、より魚の鮮度を保ちやすくなります。
神経絞めに必要なアイテムは、ステンレス製のワイヤーです。 事前に用意しておきましょう。 脳締めによって空いた穴からステンレスワイヤーを差し込み、尾ヒレの付け根部分までぐっと通します。
その後はエラを切って血抜きをしておきましょう。 ここまでできれば完璧です。
持ち帰る際の注意点2つを確認
船上で処理した魚は、できるだけ良い状態のまま、自宅まで持ち帰らなくてはいけません。
このときのポイントを2点紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
魚を氷締めにした場合、クーラーボックスの中は、氷と魚、そして水でいっぱいになっているでしょう。 実はこの水を長時間放置すると、腐敗菌が大量に繁殖してしまいます。 魚への影響を最小限にするためにも、溜まった水は現地で抜いて持ち帰りましょう。 釣り用のクーラーボックスであれば、ボックスの下部に水抜き栓が付いていますから、栓を抜くだけで簡単に水を除去できます。
氷締めをした場合も、脳締めや神経絞めをした場合も、魚を持ち帰る際に重要なのが「身に直接氷を当てない」という点です。 「腐敗を防ぐためにしっかりと冷やさなければ!」と思う気持ちもわかりますが、氷に直接あたった部分が変色したり、硬直してしまったりする可能性も。 せっかくの魚が劣化してしまいます。 氷はタオルなどに包んで、直接魚に当たらないように工夫しましょう。
魚が大型の場合は、1尾ずつ新聞紙やタオルでくるむのがおすすめ。 魚の上からしっかり氷をかぶせることで、長期間の移動も安心です。
釣った魚を持ち帰ったら…できるだけ早く下処理を済ませよう
締めた魚を持ち帰ったら、できるだけ早く下処理を済ませることが大切です。
具体的には、以下のような作業を行いましょう。
・ウロコを引く
・内蔵を除去する
・エラを取り除く
まずは釣ってきた魚のウロコを引きましょう。
この段階でウロコの処理を済ませておけば、あとで調理する際のハードルも低くなります。
魚ができるだけ新鮮なうちに作業した方が、作業しやすいでしょう。
魚のパーツの中でも、特に傷みやすいのが内蔵とエラです。
帰宅したあと、できるだけ早く両者を取り除くことで、魚を長持ちさせられます。
また内蔵にアニサキスがいた場合、内蔵の状態が悪化すると、身の方に逃げ出してしまいます。
内蔵にいる間に、内蔵ごと取り出してしまえば、より安心・安全に食べられるでしょう。
頭を落とすかどうかは、その後の調理方針に沿って決定するのがおすすめです。
大量に釣ってきた場合や、できるだけ長く鮮度の良い状態を保ちたい場合、冷蔵庫にあまりスペースがない場合には、頭を落とした状態で保存すると良いでしょう。
下処理を終えた魚はしっかりと洗い、その後丁寧に水気を拭き取っておきます。
1匹ずつキッチンペーパーに包み、さらにラップで巻きましょう。
冷蔵庫で保存する場合は4~5日程度で食べきってください。
この期間に食べきれる量以外は、冷凍保存するのがおすすめです。
適切な形で冷凍保存できていれば、約1ヶ月間は美味しい状態を保てるでしょう。
きちんと処理した上で、真空パックに保存すれば、保存期間をさらに延ばせます。
釣りが好きで海に行く機会が多い方は、ぜひ真空パックでの保存についても、積極的に検討してみてください。
釣った魚を美味しく食べよう!おすすめの食べ方3つを紹介
ここからは、釣ってきた魚を美味しく食べるための方法を紹介します。
ターゲットを決めて出かける船釣りでは、予想以上の爆釣の結果、同じ種類の魚ばかりが食卓に並び続ける…なんて事態にもなりかねません。
お刺身や焼き物、煮物といった定番の楽しみ方以外のおすすめを3つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
釣った魚の下処理を済ませ、冷蔵庫で保管すれば熟成が進みます。 この熟成段階による味の違いを楽しめるのも、自分で釣った魚ならではの魅力と言えるでしょう。
釣った日に食べる新鮮な身は、ぷりぷりしていて引きしまっているもの。 どちらかというと淡泊な味わいで、フレッシュな魅力を堪能できます。 一方で、4~5日間かけて熟成が進んだ魚は、まろやかで凝縮されたうま味を楽しませてくれます。 初日との味の違いに、驚く方も多いのではないでしょうか。
熟成された魚の身は、とろけるように柔らかく、うま味が舌に絡みつくような感覚を楽しめます。 「船釣りの魅力は新鮮な魚を思う存分楽しめること」と言われていますが、それだけではありません。 たくさん釣れたときだけの楽しみ方として、ぜひ新鮮な魚と熟成された魚の食べ比べに挑戦してみてください。
たくさん魚が釣れたとき、保存方法に困っているときには、魚の一夜干しに挑戦してみるのもおすすめです。 干物にすれば、生魚や焼き魚とはまた違った味わいを楽しめるでしょう。 「魚料理のレパートリーが思いつかない…」という方でも、手軽に実践できるアレンジ方法です。
一夜干しとは、風通しの良い日陰や夜に魚を干し、熟成と乾燥を進めていくスタイルの干物です。 天日干しのように天候に左右される恐れはありませんし、専用の道具がなくても挑戦しやすいという特徴があります。 魚を干すためのネットがなくても、一夜干しシートを用意すれば、誰でも手軽に干物作りに挑戦できるでしょう。 具体的な作り方は、以下のとおりです。
1.魚をさばく 2.塩分濃度10%の塩水に25分程度、魚を浸しておく 3.キッチンペーパーで水気をしっかりと取り除く 4.一夜干しシートを使って、魚の身をきっちりと包む 5.冷蔵庫に入れて半日程度待つ
たったこれだけで、一夜干しの完成です。 完成した魚に触れてみると、しっかりと水分が抜けているのを確認できるでしょう。 食べるときには、こんがり焼けばOKです。 調理に手間がかからないのも、一夜干しの魅力の一つです。
釣ってきた魚を一夜干しにすることで、そのうま味が凝縮されます。 市販の一夜干しとは一味違う、優しい味わいを楽しめるでしょう。 一夜干しの場合、天日干しとは違って、身が柔らかく食べやすいという特徴があります。 幅広い世代が楽しめる魚料理として人気です。
一夜干しにおすすめの魚は、以下を参考にしてみてください。
・アジ
・サバ
・イワシ
・キス
・カマス
魚によって、違った表情を楽しませてくれますから、ぜひいろいろな魚で挑戦してみてはいかがでしょうか。
下ごしらえの段階で取り除かれる頭や内臓、骨といった部位は、魚のアラと呼ばれています。 そのまま廃棄物として処理する方も多いですが、せっかくですから、アラ料理を楽しんでみるのもおすすめです。 アラまで美味しく料理できるのは、新鮮な魚を手に入れてこそ。 これも、自分で魚を釣り上げる魅力の一つと言えるでしょう。
アラ料理でおすすめなのは、煮物や汁物など。 アラから魚のダシが出て、濃厚な味わいを楽しめるでしょう。 臭みをなくすためには、下処理を丁寧に行うことが最大のコツ。 全体に塩をまぶして少し置いたあと、熱湯を回しかけて臭みを取り除きましょう。 その後、一つ一つをきれいに洗って、汚れを落とすのがおすすめです。
背骨の周りの「血合い」部分は、「癖が強くて苦手…」という方も多いのではないでしょうか。 とはいえ、魚の血液を多く含む部分には、たっぷりの栄養が含まれています。 上手に食べれば、家族みんなの健康増進に役立つでしょう。 血合いの癖を和らげるためには、揚げ物にするのがおすすめです。 しょうがや味噌、カレー粉といった調味料を組み合わせれば、さらに臭みを抑えられます。 子どもにとっても食べやすい味に仕上がるでしょう。 しっかりと味をつければ、お酒のおつまみにも最適ですよ。
釣った魚は適切な処理と調理で美味しくいただこう!
船釣りの魅力は、ただ単純に「魚を釣り上げるだけ」ではありません。
釣った魚を自分で処理・調理して、美味しくいただくところまでが醍醐味と言えるでしょう。
船上で締めたり、自宅に帰ってきてから下処理をしたり…大変な作業は多いもの。
しかし丁寧に作業すればするほど、美味しい魚を味わえるでしょう。
船釣りで大量の魚が釣れたときには、ぜひ調理法にもこだわってみてください。
自分で釣ってきた魚だからこその味わいに、病みつきになる方も多いのではないでしょうか。
釣った魚を調理し、自宅で晩酌を楽しみつつ、「次の船釣りはどこで何を釣ろうか?」と考えるのもおすすめですよ。